防爆(電気)機器 [(electrical) equipment for explosive atmospheres]

可燃性物質が存在する雰囲気での使用を目的とする、1種類以上の防爆構造を具備する電気機器を指す。防爆電気機器と防爆電気機器ではないものの違いの一つは、「型式検定合格標章」の表示の有無にある。国内で設置し使用できる防爆電気機器は、わが国における検定に合格し、型式検定合格標章(機械等検定規則第 14 条)が表示された機器でなければならない。

p-3より引用

爆発性雰囲気 [explosive atmosphere]

大気中で、ガス、蒸気、浮遊物、粉じん又はくず状繊維と空気とが混合して可燃性の状態にあり、一度発火するとその周辺全体に火炎が伝播する雰囲気をいう。

p-5より引用

 

 危険場所 [hazardous area]

電気機器の構造、設置及び使用について特別な安全対策を必要とするほど多くの爆発性雰囲気が存在し、又は存在することが予測される場所をいう。

 

p-8より引用

 

本質安全防爆構造 [intrinsic safety i ]

正常状態及び特定の故障状態において、電気回路に発生する電気火花及び高温部が規定された試験条件で所定の試験ガスに発火しないようにした防爆構造をいう。

——-解 説 ——-

●この防爆構造は、その安全の程度によって “ia”、“ib” と表示される。

●構造規格では、本質安全防爆構造を「電気機械器具を構成する部分の発生する火花、アーク又は熱が、可燃性ガス蒸気に点火するおそれがないことが点火試験等により確認された構造」と定義している。

 

p-12より引用

発火の危険性

発火源

工場・事業場には様々な発火源が存在するが、それらは恒久的かつ定置的な発火源と、臨時的かつ移動する発火源に大別される。

前者の場合は、発火源となるものを使用しないか、又は爆発性雰囲気から隔離し若しくは発火源とならない技術的な対策を講ずることが求められている。後者の場合は、爆発性雰囲気が生成されないことが確認された期間においては、特別な対策を講ずる必要はないが、爆発性雰囲気が生成されるおそれがある場合には、恒久的かつ定置的な発火源の場合と同様に、発火源となるものを使用しないか、除去するか、隔離するか、又は発火源として作用しないように技術的な対策を講じなければならない。

 

(p-18より引用

 

設備の防爆対策

設備を可燃性物質が存在する場所に設置する場合は、通常運転中又は規定された故障条件のいずれかの場合でも火花(アーク、スパーク)又は高温表面により発火するおそれを減ずる保護対策を講じなければならない。

次に、産業現場で一般に使用される粉じんも多くは可燃性である。発火した場合、適切な比率で空気と混合した粉じんは相当に激しい爆発を生ずる。このような可燃性物質が存在する場所で設備を使用することが避けられないのであれば、適切な予防処置により設備の外部の爆発性雰囲気への発火のおそれを無くすための適切な保護対策を講じなければならない。……[略]……

可燃性粉じんは、機器による様々な要因によって発火するおそれがある。

対象とする粉じんの発火温度より設備の表面温度を低くすることが先ず原則である。粉じんの発火は、粉じんが浮遊状態であるか、又は堆積している状態であるかによって異なり、更に堆積の厚さ及び熱源(火花、表面温度)の種類等によっても異なることを承知しておかなければならない。……[略]……

すべての産業用の設備には、電気機器に関連したものの他、多くの発火源が存在する可能性がある。予防処置として、多くの発火源に対し、安全性を保証することが必要になることがある。

 

p-34より引用

電気設備の防爆対策の考え方

電気設備に起因する爆発を防止するためには、電気設備が爆発性雰囲気の発火源とならないような技術的手法及び措置(防爆対策)を講ずることが必要である。

可燃性物質を取り扱う場所で発火源をもつ電気設備を使用する必要があり、かつ爆発性雰囲気が電気設備の周囲に生成する可能性を除去することができないならば、爆発性雰囲気と発火源の共存の可能性ができるだけ少なくなるように、これらのいずれか又は両方の存在の可能性を減少することを目的として防爆対策を講じなければならない。

可燃性物質を取り扱う実際の環境においては、爆発性雰囲気が存在しないようにすることは困難である。また、電気設備が決して発火源とならないようにすることも困難である。したがって、爆発性雰囲気を生成するおそれがある場所では、発火源となるおそれが非常に少ない設備を使用することが必要である。

 

p-34より引用

 

 

漏洩等によるガス爆発の発生と防止対策の原則

漏洩等によるガス爆発は、大気中又は建屋等の内部に生成された爆発性雰囲気と発火源とが共存する場合に発生する。したがって、このような爆発を防止するには、次の(1)及び(2)の両面から対策を講ずることが必要である。

(1) 爆発性雰囲気の生成防止対策

発火源となるものが設置され又は使用される場所には、爆発性雰囲気が生成されず、又は爆発性雰囲気が流入しないような対策を講じなければならない。

(2) 発火源対策

爆発性雰囲気が生成される(おそれのある)場所(危険場所 第2章参照)には、発火源となりうるものを設置しない若しくは使用しないように管理するか、又は発火源となるものを隔離、若しくは発火源として作用しないように技術的な対策を講じなければならない。

 

——-解 説 ——-

①爆発性雰囲気を生成する工場・事業場は、化学工場以外に、石油精製業、医薬品製造業、可燃性ガス製造業、機械又は電気製品製造業、半導体製造業、合成樹脂製造業、ゴム製品製造業、火力発電所、塗装作業所、油糟所、ガソリンスタンド、LPガス充填所、各種研究所など、多岐にわたっている。

②爆発性雰囲気は、設備、容器、配管などから漏洩した可燃性ガス蒸気と空気とが混合して生成されるが、設備、容器などの内部にも生成されていることがある。

③発火源としては、一般に、裸火、高温表面、電気火花、静電気放電、衝撃火花などか挙げられるが、防爆電気設備で一般に考慮するのは、爆発を起こさせるだけのエネルギーをもった電気火花、アーク及び通電による高温表面である。ただし、回転機では摩擦による発熱又は火花、また、その他の場合に材料面で静電気放電を考慮している。

 

p-39より引用

 

設置する防爆電気機器の検討

(a) 危険場所に応じた使用

防爆電気機器は、危険場所での使用に適するように開発され、設計されているが、機器の種類、対象とする可燃性ガス蒸気の種類、使用条件などによって防爆性能に差異が出てくるので、どのような点に配慮すれば、危険場所の種別(特別危険箇所、第一類危険箇所又は第二類危険箇所)に適切に対応できるかという観点で選定をする。

(b) 防爆構造の選択

防爆電気機器の防爆化の考え方は、次のとおりである。

電気機器の防爆を具現化するために様々なアプローチが用いられているが、これらを規格化する際には、更に様々な要件を同時に含めて考慮して、現在の防爆構造が定められている。したがって、一律に防爆性能の評価をすることは困難である。そこで国内では、防爆構造に応じて使用できる危険場所を指定している。これらを受け、危険場所と機器の用途から防爆構造を選定することも重要である。例えば、設備の安全を司る保護装置に耐圧防爆構造を採用する場合には、(耐圧防爆構造の機器では、内部での爆発は許容されるため)内蔵された保護装置が破損したときの対応も併せて施しておくことが必要である。

a) 発火源の防爆的隔離

電気機器の発火源となる部分を、周囲の可燃性ガス蒸気から隔離して接触させないようにする方法と、電気機器内部で発生した爆発が発生源となって、電気機器の周囲の可燃性ガス蒸気に波及しないように発火源を実質的に隔離する方法がある。前者に基づいて製作されたものとしては、内圧防爆構造及び油入防爆構造の電気機器があり、後者のそれには,耐圧防爆構造の電気機器がある。

b) 電気機器の安全度の増強

正常な状態において発火源となるような電気火花発生部及び高温部が存在しない電気機器につい

ては、特に安全度を増加して故障を起こりにくくしておくことによって、総合的に事故が発生す

る確率をゼロに近い値にすることができる。この考え方に基づいて製作されたものとして、安全

増防爆構造の電気機器がある。

c) 発火能力の本質的抑制

弱電流回路の電気機器の場合は、正常な状態だけではでなく、事故時において発生する電気火花

及び高温部についても、可燃性ガス蒸気に対し発火するおそれがないことが試験その他によって十分に確認された場合には、これを本質的に発火能力の抑制された機器として使用することができる。この考え方に基づいて製作されたものとして、本質安全防爆構造の電気機器がある。

 

 

p-42より引用

 

 危険場所分類の基本

危険場所の分類を行う目的は、主に爆発性雰囲気が発生する可能性のある環境を綿密に分析・分類し、その環境内に据付けるべき防爆電気機器の正しい選択をするためである。

危険場所では、爆発性雰囲気と発火源が共存することによって、火災又は爆発の危険のおそれがある。したがってこのように危険場所を分類することによって、分類された危険場所に対応した防爆電気機器を使用することによって、安全な運転を確保する。

また、次の

(1) 発火源の周辺に爆発性雰囲気の発生するおそれを除去する。

又は

(2) 発火源を除去する。

いずれかの実施が出来ない場合、これらのいずれか一方又は両方が発生するおそれを減じることによって、その発火源の周辺で爆発性雰囲気が生じるという同時発生の確率を許容できるレべル以下まで小さくすることが可能になる。 可燃性物質が使われている大部分のプラント等では、爆発性雰囲気を生じないということを確実に保証することは困難である。電気機器が、発火源を生じないことを確実に保証することもまた困難である。したがって、爆発性雰囲気の発生確率の高い場所においては、発火源を生じるおそれが極めて低い電気機器を使用することが必要不可欠であり、それによって防爆性能上より安全な設備にすることができる。反対に、爆発性雰囲気の発生を減少できる場所では、発火源の発生確率の高い電気機器も特定の条件を満たす事によって使用できる。この分類の手法を実施するためには、先ず、爆発性雰囲気の発生確率を三つ(特別危険箇所、第一類危険箇所及び第二類危険箇所)に分類する。……[略]……

 

P-86より引用

 

ガス蒸気危険箇所の種別関係

危険箇所は、爆発性雰囲気の存在する時間と頻度に応じて次の三つに分類する。

 

——-解 説 ——-

①API RP505 では、爆発性雰囲気の生成時間が年間 1,000 時間を超える場合を特別危険箇所に、1,000 時間から10 時間の場合には第一類危険箇所に、10 時間から 1 時間の場合には第二類危険箇所に相当するという目安を示している。

②地震その他、予想を超える事故などに起因するもので、発生の頻度が極めて少なく、かつ可燃性ガス蒸気の漏洩が大量で、防爆電気設備の防爆対策の範囲を超えるような場合は想定していない。

 

(1) 特別危険箇所

特別危険箇所とは、爆発性雰囲気が通常の状態において、連続し長時間にわたり、又は頻繁に可燃性ガス蒸気が爆発の危険のある濃度に達するものをいう。

——-解 説 ——-

特別危険箇所となりやすい場所の例としては、「ふたが開放された容器内の引火性液体の液面付近」がある。ただし、これは、通風、換気の良好な場所においては特別危険箇所としての範囲が狭くなり、第一類危険箇所又は第二類危険箇所と判定されることがある。……[略]……

 

(2) 第一類危険箇所

第一類危険箇所とは、通常の状態において、爆発性雰囲気をしばしば生成するおそれがある場所をいう。

——-解 説 ——-

第一類危険箇所となりやすい場所の例を示せば、次のとおりである。

①通常の運転、操作による製品の取出し、ふたの開閉などによって可燃性ガス蒸気を放出する開口部付近

②点検又は修理作業のために、可燃性ガス蒸気をしばしば放出する開口部付近

③屋内又は通風、換気が妨げられる場所で、可燃性ガス蒸気が滞留するおそれのある場所

ただし、このような場所は、通風、換気がよい場合には、第一類危険箇所としての範囲は狭くなり、第二類危険箇所又は非危険場所と判定されることがある。……[略]……

 

(3) 第二類危険箇所

第二類危険箇所とは、通常の状態において、爆発性雰囲気を生成するおそれが少なく、また、生成した場合でも短時間しか持続しない場所をいう。

——-解 説 ——-

①第二類危険箇所となりやすい場所の例を示せば、次のとおりである。

ⓐガスケットの劣化などのために可燃性ガス蒸気を漏出するおそれのある場所

ⓑ誤操作によって可燃性ガス蒸気を放出したり、異常反応などのために高温、高圧となって可燃性ガス蒸気を漏出したりするおそれのある場所

ⓒ強制換気装置が故障したとき、可燃性ガス蒸気が滞留して爆発性雰囲気を生成するおそれのある場所

ⓓ第一類危険箇所の周辺又は第二類危険箇所に隣接する室内で、爆発性雰囲気がまれに侵入するおそれのある場所

②爆発性雰囲気の持続とは、発生から消滅までをいう。

③従来、二種場所(第二類危険箇所に相当)は、「異常な状態において、危険雰囲気(爆発性雰囲気)を生成するおそれがある場所」と定義されていたが、第二類危険箇所は、通常の状態における爆発性雰囲気の生成のおそれによって定義される。例えば、配管継手からの漏出は一般には無視できる程度であるが、ガスケットが経年劣化することによって漏出量が増加してくるおそれがあるが、これは通常の状態で発生するものである。また、リリーフバルブは、異常反応や誤操作時に作動するものであるが、予測されない状態での放出は、通常の状態での事象と判断され、この周辺は第二類危険箇所と定義される。つまり通常の状態において想定すべき事象の範囲がより広くなった点に注意を要する。……[略]……

 

 

P-86より引用

 

 

(平成24年11月1日)

ISSN 1882-2703

労働安全衛生総合研究所技術指針

TECHNICAL RECOMMEDATION

OF NATIONAL INSTITUTE

OF OCCUPATIONAL SAFETY AND HEALTH

JNIOSH-TR-NO.44 (2012)

ユーザーのための工場防爆設備ガイド

USERS’ GUIDELINES

for Installations for Explosive Atmospheres

in General Industry

PAGE TOP